奥中山の風

岩手県一戸町奥中山に暮らす移住者の日記

やさしくあきれて

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窓の外は雪景色

今年の初積雪は例年より遅いものの
このまま寝雪になる勢いを感じさせる

 

こんな寒い朝にインスタントコーヒーを飲んでいると
頭の中に再生されるロバータ・フラッグの「やさしく歌って」
懐かしい某コーヒーのCMソング

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ここのところ信じたくないミスばかりしている
古いクレジットカードのつもりが
届いたばかりの新しいのにハサミを入れたり
缶の蓋を閉めないでカバンに入れて
買ったばかりの本がコーヒーに染まったり
割れないように気をつけて持ち帰ったのに
冷蔵棚に入れる直前に卵を落としたり
投函するのを忘れないよう車のダッシュボードに置いたのに
翌日までハガキがそこにあったり
なくさないようにしまったのはいいけれど
そのままスマホが見つからなくなったり

 

こういうのをしょっちゅう目にする夫がある朝
「大丈夫か?」と心配そうに言った
食べかけのスナック菓子の袋をいつもの引き出しにしまったはずが

ゴミ箱に捨てていたのだ

これはかなりヤバいと思った
しかしそれでも私はこれから夫に弁当を作ってやらねばならなかった
このまま落ち込みっぱなしではいられない
「こういうときは『今日も飛ばしてるねー』って言ってよ」
とっさに返した言葉に我ながら感心
落ち込んでも心配しても状況は変わらないのだから
笑い飛ばしたほうがいい

 

ただ迷惑が自分にだけはねかえってくる分にはいい
財布を車に置いたままコンビニで買い物してレジの人を待たせたことがあった
あまりのバツの悪さに息を切らせながら
「すみません」と詫びる私に十代かと思しきアルバイトの女の子は
「大丈夫ですよー」と満面の笑顔で応えてくれた
神だ! 天使だ! 心がスーッと軽くなった
奥中山のFマートでのこと

 

罪悪感もある
反省もしている
でも齢をとって
以前のよういかないということを
学んでいく過程では
どうしてもこのようにミスをおかし
ときにご迷惑をおかけしてしまう

 

これは人類がみな経験する過程
抗っても避けられない
あなたも私もきっと同じ
だからどうか

 

「やさしくあきれて」

 

そう心から願う冬の朝

 

youtu.be

 

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縄文リレーマラソン2021

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八幡平のリンドウチームさんがくださったリンドウと大会プログラム

10月31日。秋晴れの御所野縄文公園を会場に、縄文リレーマラソン大会が決行された。
世界文化遺産に登録されてからは初めて、
そしてここを会場に開催されるのは最後という記念すべき大会だった。

 

「1チーム10人以内で、周回コース約800メートルを縄文タスキのリレーによって、
ラソン世界最高記録と同じ『2時間01分39秒間』の完走をめざす」と大会要綱にある。
つまり時間内に多く周回することを競うレースということである。

 

過去に数回、参加者として走る夫とそのチームを応援したことがあった。
走る阿呆に、観る阿呆、年甲斐もなくはしゃいで来た自覚はある。
しかし同じ阿呆なら、走らにゃ損、損、絶対ソンっ!
ということで、今年はランナーとしてレースに参加。
夫のほうは別の大会のため今回は欠場。

 

今大会は32チーム、約300人が出場。
御所野の大地はひとであふれかえったかというと、そうでもなかった。
だが駐車場の混み具合は尋常ではなかった。
ゲストランナーには猫ひろしさんを迎え、
オープニングからクロージングまで会場は歓喜に湧き通しだった。

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二戸合庁チームのオブチキさん

我がチームは計8人。
30代、40代1人ずつに50代が3人という奥中山組に、
20代の地域おこし協力隊の3人が助っ人に加わってくれた。
多いひとで6周。
私は一番少なくて3周。
皆で37回襷をつなぐことができた。
第5位のチーム2つの記録は40周。
私がいなければ入賞は狙えたかもしれない。
しかしそんなことは全く気にならず
とにかく終始楽しかった。
個人的に予想を上回る結果を残せたのも
楽しくて調子にのったせいだ(笑)。

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御所野公園入口付近

御所野の紅葉はちょうど見頃だったし、
空気もさわやか。
速度こそ歩いているのと大差ないけれど、
くじけることなく走り続け、襷をつなぐ達成感。
走る間はひとりとはいえ、
チームメイトのいる嬉しさ。
そして応援してもらうのがあんなに嬉しいとは。

 

恥を偲んででも参加して本当によかった。
これからも年齢を言い訳にせず
やりたいことはやってみたい。
その先の新鮮な感動を逃したくはない。

 

この人生は一度きり。
もう先延ばしにする余裕などない(笑)。

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参加賞

 

奥中山に温泉あり

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この山の中腹に奥中山高原温泉があります

先日、エコキュートが故障。数日、温泉通いをした。

銭湯ではない温泉である。
ここ奥中山には奥中山高原温泉がある。

しかも朝朱の湯、煌星の湯とふたつもである。

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奥中山高原温泉併設スキー場で一戸のゆるキャラ“ごしょどん”

 

温泉が近くにあるというのはとてもいいものである。

 

2011年の東日本大震災のときも、停電で水が機械内で凍結、給湯器が壊れてしまった。
工場が津波の被害にあい部品が調達できず、1ヶ月以上温泉にお世話になった。
ガソリンも不足していたときで、息子とふたりよく西岳を自転車で漕いであがった。
私は電動機付き自転車だったが、必ず途中でバッテリー切れし、押して登る羽目になった。
けれど帰りはずっと下り。ビュンビュン風を切って帰ったのが懐かしい。

 

温泉に行くと同じような境遇の知り合いが数人いて、いつも挨拶を交わした。
あのときは日本中が大騒ぎで、世間は暗いニュースに溢れていたけれど、
電動機付自転車でヒーヒー言いながらノロノロ登る私を坂の上で待っている息子の呆れ顔、
他愛もない話をしては一緒に笑ってくれる温泉友達は、私にとって何よりの心の救いだった。

 

移住して12年ほどたつけれど、移住前の10年は温泉に併設する宿の常連だった。
最初は夏に2、3泊。そのうち秋や春、しまいには冬にも訪れた。
夏に10連泊したこともある。

都会に帰ってしばらくすると宿のスタッフさんからお礼のハガキ。

あれはとても嬉しかった。

 

そのスタッフさんは、今や地元の友だちに(笑)。
方言や慣れない風習に戸惑う私をことあるごとに助けてくれている。

 

今回の給湯器の故障でも私たち夫婦は慌てることはなかった。
むしろ正々堂々と連日温泉通いというプチ贅沢が許されることに喜びさえ感じた。
ちなみに入浴料は朝朱が570円、煌星が650円(いずれも大人)。
前売り券を買っているからもう少しお安い贅沢である(笑)。

 

先日も温泉で久しぶりにママ友と会った。
誰々ちゃんが同棲してるとか、結婚して子どもができたとか。
自分たちの老親のこととか、自分の老後とか…。
汗も愚痴も心配もみんな洗い流してしまえの心境か(笑)。
すっかり話に花が咲いたはいいが長湯がたたって足がジンジン。
掻きたくなるのを堪えて運転して帰った。

 

ああ温泉が近くにあるってホント幸せ〜。

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スポーツの秋

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天高く馬も牛も人も犬も肥ゆる奥中山の秋

秋はスポーツのシーズンと言うが、
ここ奥中山では小学校の運動会、中学校の体育祭は春に行われる。
おそらく秋では半袖、短パンの体操服には寒すぎるからだろう。

それらとは別に地区運動会が毎年8月に行われる。
(昨年と今年はコロナ禍のため中止)
奥中山も8月はなかなか暑いけれど
帰省者で賑わうこの時期の恒例行事。
種目ごとに参加できる年齢が定まっていて
子供からお年寄りまでが参加できる運動会である。

とはいえスポーツ嫌いな私は裏方が専門。
しかし4年前、予定していた選手が出場時間に
表れなかったため急遽、代役を言い渡された。

種目は輪投げリレー。
トラック1周を4人でリレー。
襷が輪投げの輪で、走り出す前に輪投げを
成功させなくてはいけない。

私は第2走者。
ドキドキする間もなくスタートのピストル。
するとなんと第1走者が1位でやってきたではないか。
輪を受け取った瞬間、これはイヤなものを手にしたと感じた。

案の定、投げても輪が目標に届かない。
届いても棒にはまらない。
どうしていいかわからないまま闇雲に
投げては拾うを繰り返すばかり。

やがて我がチーム以外の全選手が走り終えた。
ビリなのは百も承知。それは構わないとしても
走り出さないことにはレースは終わらないのだ。

まともなアタマでいたら焦ってますます酷くなる。
本能的に思考を止めて、ただただ輪を投げ続けていた。
無情にも輪はなかなかはまってくれない。

どれくらいたった頃だろう。
距離を縮めるかなんかして、ようやく走り出せたのは。

なんとも気の毒なのが私のあとの2人の走者である。
全観客が注視するなか律儀にビリの務めを果たしてくださった。

恥ずかしい、情けない、申し訳ない、
穴があったらはいりたい…。
複雑な思いを抱えてチームメイトが待つテントに向かった。

開口一番「すみませんでした!」と言って頭を下げる。
顔をあげると、みんな笑顔だった。
「アタシも苦手」と言ってくれる人。
冗談めかしてくれる人。
ホントにみんなやさしかった。
気まずさはそう長く続かなかった。

おかげさまでなんやかや、いい思い出である。

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先日、お隣さんが我が家とお隣に向かう坂道の途中に
落ちたクルミをいれるカゴを設置した。

あるとき誰もいないのを確認して
クルミをカゴに向かって投げてみた。
届かない。
もう一回やってみる。
近づいだが箱にははいらない。
さらにクルミをたくさん拾い集めて挑んでみるが
びっくりするほどはいらない。

ん、もしや古傷が疼きだしたか?

果たしてこれはスポーツなのかという疑問はさておき、
毎日、クルミいれに励む日々。
気持ちの上では千本ノック。

嗚呼、スポーツの秋。

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黄色い箱めがけてクルミを投げるのだが

 

 

北の風

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かつて奥中山に「北の風」という喫茶店があった。
メニューはケーキとコーヒー、紅茶。
ミルフィーユは絶品で、フルーツを使ったケーキは
いつも季節を感じさせてくれた。

 

店主の上田初子さんは元先生。
先生とか、初子先生とか呼ばれておいでだったので
私まで教え子でもなんでもないのに「先生」と呼んでいた。

 

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ログハウスのおしゃれな店構えによく手入れされた広い庭。
12年前、奥中山に越してきたとき、
こんな素敵なお店が近くにあるのがとても嬉しかった。

 

常連になって、店主とお近づきになりたくて、
暇を見つけてはお店に通った。

 

最初は世間話、そのうち身の上話、
やがて人生相談ができるくらいになった。

 

メニューにはないお昼をご馳走になったり
お店の休日に一緒にお菓子を焼いたり
藍染体験をさせてもらったり
夜のファッションショーに招いてもらったり。

 

思えば最初に御所野縄文公園に連れて行ってくれたのは
初子先生だったかもしれない。

 

ある日、御所野縄文公園の遺跡ガイドになりたいと言ったら
会長であるご主人の敏男先生(ご主人も元先生)につないでくださった。
それを機にどんどん御所野の魅力に取り憑かれていき
次第に「北の風」に通うこともなくなってしまった。

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最後に行ったのはいつだったろう。
近くにあるし、いつだって行ける。
そんなふうに思っていたが
ある日、敏男先生からケーキはもう作らない、
と聞かされた。
それでも近くにいるのだから、会いたいと思えば
いつだって会える、そう思っていた。

 

そんな矢先、初子先生が亡くなったと知らされた。

 

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すっかり遠い日になっていたあの日々の記憶を辿ってみる。
初子先生は居場所がなかなか見つけられなかった余所者の私を
かくまってくれていたんだと、今になってわかる。

 

それなのに不義理を重ね、結局、お詫びもお礼もできないまま
永遠にお別れとなってしまった。

 

初子先生、その節はお世話になりました。
ご安心くださいね。
私、もう燻ってません(笑)。

 

「北の風」はもうないけれど、
今度は私自身が「奥中山の風」になろう。
自由に 好きなところへ
止まることなく飛んでいこう!

 

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花のように

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奥中山のひまわり畑

9月11日の朝、スマホの着信音。
大学時代からの友人のおめでとうのメッセージ。
いくつになっても誕生日におめでとうを言われるのは嬉しい。

 

その言葉だけで十分に嬉しい。本当にそう心から思う。
でも何もいらないとは言い難く、花をいただけるのもまた格別。

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齢を重ねるごとに花の魅力、魔力、威力に驚く。
嬉しいとき、喜ばしいときに花を添えれば、場も心も華やぐ。
悲しいときの花は何千、何万もの言葉を紡ぐより慰めになる。
慶弔時でなくても、家に花があれば気持ちがいい。

 

私は花粉症だが、
それでも花があって迷惑と思うことはない。

 

いてくれるだけでいい。
何もすることはない。

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おめでとうをくれた皆さま。
あなた方は私にとって花のような存在です。
ずっとそのままでいてください。

 

そして私も誰かにとっての花のようでありたい!

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