奥中山の風

岩手県一戸町奥中山に暮らす移住者の日記

北の風

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かつて奥中山に「北の風」という喫茶店があった。
メニューはケーキとコーヒー、紅茶。
ミルフィーユは絶品で、フルーツを使ったケーキは
いつも季節を感じさせてくれた。

 

店主の上田初子さんは元先生。
先生とか、初子先生とか呼ばれておいでだったので
私まで教え子でもなんでもないのに「先生」と呼んでいた。

 

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ログハウスのおしゃれな店構えによく手入れされた広い庭。
12年前、奥中山に越してきたとき、
こんな素敵なお店が近くにあるのがとても嬉しかった。

 

常連になって、店主とお近づきになりたくて、
暇を見つけてはお店に通った。

 

最初は世間話、そのうち身の上話、
やがて人生相談ができるくらいになった。

 

メニューにはないお昼をご馳走になったり
お店の休日に一緒にお菓子を焼いたり
藍染体験をさせてもらったり
夜のファッションショーに招いてもらったり。

 

思えば最初に御所野縄文公園に連れて行ってくれたのは
初子先生だったかもしれない。

 

ある日、御所野縄文公園の遺跡ガイドになりたいと言ったら
会長であるご主人の敏男先生(ご主人も元先生)につないでくださった。
それを機にどんどん御所野の魅力に取り憑かれていき
次第に「北の風」に通うこともなくなってしまった。

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最後に行ったのはいつだったろう。
近くにあるし、いつだって行ける。
そんなふうに思っていたが
ある日、敏男先生からケーキはもう作らない、
と聞かされた。
それでも近くにいるのだから、会いたいと思えば
いつだって会える、そう思っていた。

 

そんな矢先、初子先生が亡くなったと知らされた。

 

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すっかり遠い日になっていたあの日々の記憶を辿ってみる。
初子先生は居場所がなかなか見つけられなかった余所者の私を
かくまってくれていたんだと、今になってわかる。

 

それなのに不義理を重ね、結局、お詫びもお礼もできないまま
永遠にお別れとなってしまった。

 

初子先生、その節はお世話になりました。
ご安心くださいね。
私、もう燻ってません(笑)。

 

「北の風」はもうないけれど、
今度は私自身が「奥中山の風」になろう。
自由に 好きなところへ
止まることなく飛んでいこう!

 

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